気付いてしまった、私

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「私、ホント馬鹿だよね」 雪さんの頬に大粒の雫が滴る。 私はどう接していいかわからない。 彼は本当にいつも優しいから、つい甘えたくなってしまう気持ちもわかる。 だけど私はどうしても一歩退いてしまう為、素直に甘えられる雪さんが少し羨ましいと思った。 雪さんは美人で人当たりも良くて優しいから、きっと今まで言い寄ってきた男の人は多かったんだろうと思う。 そしてその殆どの人が、下心で優しく接してきたのだろうと予想するのは容易かった。 だから最初は、彼もそうなのだと思ったのだろう。 だけど違った。 彼は多分、私や雪さんの周りでは唯一と言っていいかもしれない、容姿を度外視して内面を見てくれる人。 だから雪さんは、初めて出会ったそんな彼を好きになったのだろう。 そしてきっと、それは私も同じ… 「気づいちゃった……」 そんな中、私は彼が"待ってる娘"の事が気になった。 それは単純に、雪さんと同じように何処か遠くに行ってしまった娘が帰ってくるのを待ってるのだろうか。 それとも、これは大胆なこじつけかもしれないけど、雪さんが恋人と別れてフリーになるのを待っているのかもしれない。 そんな藁にも縋るような小さな可能性を、私は雪さんに知らせずにはいられなかった。 「だといいね…」 それに対し雪さんは、哀しそうに微笑む…。
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