気付いてしまった、私

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そして私は、どうしてかはわからないけど…何故か唐突に聞いてしまった。 「彼女作らないの?」 「…」 私はすぐに後悔した。 でも何故か止まらなかった。 「誰を待ってるの?」 「……!」 彼は暫く沈黙した後、ゆっくりと立ち上がる音が微かに聞こえ、扉を開く。 「ごめん、もう仕事行かな」 まだ少し時間はあるのに、彼はそそくさと逃げるように出ていってしまった。 本当に私は、どうしてあんな事を聞いてしまったのだろうと深く後悔し、うなだれて暫く顔を上げられなくなる。 今日は、雨は降らないで欲しい。 本当はいつでも降って欲しいとは思わないけど、今日だけは特に強くそう思った。 もしも雨が降って仕事が暇になっても、今日だけは彼とどんな顔をして何を話せばいいのかわからない。 「ねぇ晴香…私、やっと自分の本音に気付けた気がする」 『遅いくらいだけど、聞いてあげるよ』 仕事が終わってすぐ、私は晴香に電話を掛けた。 それに対して晴香は、私が何を言おうとしているのかもう既にわかっているようだった。 「やっぱり私……彼の事が好きみたい」 『知ってる』 「でも私、自分がどうしたいのかわからない…」 漸く自分の気持ちに素直になれたけど、その後の事はどうしていいかわからない。
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