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ある夏の日の噺
昨晩は熱帯夜だった。
と言っても、それはあくまで外の話。
生憎と、エアコンの効いた室内では何の不便も感じなかったのだ。
「昨日は暑かったねー」
「ウチ、エアコン壊れててさぁ」
クラスメイトたちが話している、いつも通りの光景だ。
それなのに、僕はどこか違和感を感じていた。
何かが足りない、どこか欠けている、そんな気がしてならないのだ。
「よぉ、カケル。おまえ昨日のイベ何周した?」
彼は幼なじみのリク。
いっつもゲームのことしか考えてない、能天気でバカなやつだ。
「イベ?昨日は......
......あれ?」
僕だってリクと同じくらいゲームが好きなのだ。
そんな僕がイベントに参加しないなんてことはありえない。
なのに、昨日のイベントに参加した記憶がない。
イベント成績はおろか、どんなイベだったかすら思い出せないのだ。
「なんだよ、おまえもしかして寝落ちしたの?
うわーもったいねぇ、昨日アイツの解放日だったのに。」
「は?アイツってまさか......」
「そう、おまえが前から欲しがってたアイツ。」
「嘘だろぉ......なんでよりによって......」
リクと話しても違和感は拭えなかった。
それどころか、ますます募るばかりだ。
だが僕にとってそれはまだそこまで重要なことではなかった。
......少なくとも取り逃がしたキャラよりは。
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