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…そんなもん。
「あぁあーっ助けてくれぇぇっ」
ここ、いつもの水泳教室で。
そんな悲鳴が聞こえたけど、たぶん聞こえないふりをしたほうがいい。
そんな目をした茉由に従って、私も気を紛らわせた。
ダラダラしていたら、あっという間に二日どころか早くも一週間という月日が過ぎ去ってしまっている。
少しセンチメンタルに考えてみれば、蝉が地上で生きて死ぬまでの時間。
その間、私は一体何をしていたんだろう。
蝉に少しでも時間を捧げたほうが良かった気がする。
「実は違うんだよ、心音」
「え」
茉由が急に口を挟んだ。
「蝉って、天敵に襲われたりしない限り、
一週間以上、長くて一ヶ月くらい生きてる事が多いんだって」
「へぇ…」
でもやっぱり一ヶ月か、と思う。短い事には変わりない。
夏休みがおわる一ヶ月後、私の周りでは何か変わってるのかな。
「なあ!知らんぷりしないで悩み多き親友を助けてくれよ!」
否が応でも入ってくる声の主は…叶多くん。
どうやら、何かを陸人くんに懇願しているらしい。
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