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それは紛れもなく君で、私は
…私は。
君が、微笑む。
どこかで見たことがあるはずなのに、肝心の顔の大部分は、水溜まりを覗いた時に映ったように、ぼやけていて分からない。
世界が歪む。
近くに設置されていた時計が狂って、秒針が千切れそうなほど回る。その時計はやがて、渦を巻くようにして水に飲み込まれた。
気付けば、繋がれていた君の手は、ぷくっと小さな音を立てて透明になり、そして大きくおおきくふくらみ、…
ぱちんっと弾けて消えた。
「…!」
また、泡の世界に戻されていく。
落ちていく。
離されていく。
…仕方がないんだ。
私はここにいなきゃならない。
運命がそう、告げている。私達は、それに逆らえない。
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