新しいXXX。

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 *** ――サキちゃんは髪飾りにも凝ってたなー。何をつけても全部似合ってたのは、やっぱり美人さんだったからってのが大きいんだろうなぁ。はあ……それに比べて私ときたら。  寒さを凌ぐため入ったカフェ。流行ウォッチングを続けようとしていた私の耳に飛び込んできたのは、がちゃん!と机を叩いてグラスが鳴った音だった。すわ、なんだなんだと見れば――近くの席で若いカップルが揉めているではないか。 「ああ、はっきり分かったよ。もう君とはやっていけない!」  男性の方が怒りで顔を赤くしており、財布を取り出すと叩きつけるように千円札を机に置いた。 「お釣りはいらないから。……もう二度と君の顔なんて見たくない。さようなら!」  一体どういう経緯だったのかはわからない。確かなのは、どうやら女性が男性に派手に振られてしまったらしいということだけである。女性はといえば、俯いてふるふると肩を震わせていた。短いスカートから覗く脚は理想的な細さで、それに見合ったお洒落なファーのついた茶色のブーツを履いている。こんな時だが私は眼を輝かせてしまった。あれは雑誌でも特集されている、今冬最も売れたランキング一位のブーツではないか。 ――わあ、いいないいな!ほそーいデザインだから、足がすらっとしてて小さくないと入らないって聞いたけど……あの女の人は入るのか。羨ましいなあ。  売れた、ということは足が小さい女の子も少なくなかったのだろう。まあ買っても履かないで飾ってる物好きも希にいるようだが。  残念なことに私は人より足のサイズが大きいし、そもそも大根のように太い足である。あのブーツを履くのはかなりハードルが高そうだが。 ――いいなあ。欲しいなあ。……新しいブーツ、欲しいなあ。  自分も新しいブーツが、履きたい。
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