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「はぁー、参りました!」
地面に尻餅をついた少年が、真剣な眼差しから一転して爽やかに言い放ち、俊敏に立ち上がる。少女のほうは寸止めした木刀を納めて対戦相手と差し向かい、姿勢正しく礼を交わした。
やや離れたところで、盛大な拍手の音が鳴る。
「アルハ、すごいねえ、かっこいいねえ。まるでねえさまみたいだ」
「しーっ、駄目よ、父上。まだ稽古は終わっていないのだから、静かにしていないと」
はしゃいでいるのは、東原から遊びに来ているハル。それをたしなめるウララそっくりの口調は、ルカの声だ。
応援席の父娘を振り返り、少年少女は屈託のない笑いを浮かべた。しかし師匠が歩み寄ってくると、すぐに表情を引きしめる。自分たちよりも小柄で童顔の女師匠が、そんなに怖いのだろうか。アモイの目に映るユウは、いくつになってもじゃじゃ馬娘の印象が抜けない。
師弟は手合わせの反省を始める。亡父とは比べものにならない腕前ながら、ここぞという場面での思いきりが足りず、機を逃したシュロことテシカガ・シウロ二世。強気の攻めで勝ちこそしたものの、ところどころで守りの甘さの目立つアルハ。ユウは手本を見せながら、それぞれの直すべき点を的確に指摘していく。その所作を見て、アモイは「なるほど」と独りごちた。
遠い海に浮かぶ群島国発祥の伝統武術。得物を用いずに素手で闘うその技法を、ユウは今も我流で稽古し続けている。その独特の動きが弟子の太刀筋に影響していると聞いて、実は少し気になっていた。基礎も固まらないうちから変な癖がついては困る、と。
実際に見てみれば、確かに旧知のどの流派にも属さない剣法だ。相手の勢いを殺すのではなく、むしろ引きつけて利用するような剣さばき。なかなかどうして、馬鹿にはできない。あれはただの嗜みではなく、いずれ実戦のための剣術として磨かれていくのではないか。
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