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アモイはそう言ってマツバ姫を、次いでテシカガの顔を見る。年上の部下はほっとした様子で、何度も頷いた。
「改めてお訊きしましょう。一体、何のために、このようなところまでおいでになったのです」
「話があるなら文でも送ればよい、と言いたげな顔をしているな。だが、そうもいかぬ事情が生じたのだ」
「事情?」
「これを見よ」
マツバ姫は懐から、折り畳んだ紙を取り出す。受け取って開くと、何やら見覚えのある図が姿を現した。先ほどまで作戦室で眺めていた、四関から襲堰までの間の布陣図を簡略化したものだった。
「そなたの描いたものに相違ないか」
「ええ。ここに着いてすぐ、私が甥御どのに書き送ったものです。この布陣に、何かお気になる点でも」
「問題は内容ではない」
「と、言われますと……」
「こちらはどうだ」
次に差し出されたのは、宛名も差出人も記されていない、ごく平凡な白い封筒だった。それもまた、自分が密書を封入して使者に託したもののようだ。
「封字の字形が、いつもと少し違うように見える。また墨の濃さも、若干薄いようだと」
「封字、ですか」
「わたしには、違いというほどの違いにも見えなんだが、フモンがそう申すのでな」
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