1人が本棚に入れています
本棚に追加
かくして、その薬は全世界の全世帯… 全人類へと渡り一斉に服用された。
服用してから1ヶ月、誰も副作用を起こしたと訴えることはなかった。
しかし、人々は口を揃えてこう言う。
「眠らない分、余計に仕事が多くなった。」
「睡眠が恋しい」
「あの、時間こそ人生の至福だった」と
それは、博士の考え通りだった。
「ふむ、そろそろ頃合いか。眠らない体など、現代社会の問題解決には何の意味もなさない。そもそも問題の争点はそこではない。労働体制を根本から変えなければ残業問題など変わらない。」
「私が変えたのは、人々の価値観。睡眠という概念を変えた。」
そう言うと博士はおもむろにポケットから錠剤を出した。
これまでの錠剤とは違う形をしている。
「さぁ、ここで私がこの薬を飲めば、これまで通りグッスリ眠れると言えば…貴方はいくら払うかな。」
博士の高笑いは疲れを知らず止まらない。
最初のコメントを投稿しよう!