ある薬

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かくして、その薬は全世界の全世帯… 全人類へと渡り一斉に服用された。 服用してから1ヶ月、誰も副作用を起こしたと訴えることはなかった。 しかし、人々は口を揃えてこう言う。 「眠らない分、余計に仕事が多くなった。」 「睡眠が恋しい」 「あの、時間こそ人生の至福だった」と それは、博士の考え通りだった。 「ふむ、そろそろ頃合いか。眠らない体など、現代社会の問題解決には何の意味もなさない。そもそも問題の争点はそこではない。労働体制を根本から変えなければ残業問題など変わらない。」 「私が変えたのは、人々の価値観。睡眠という概念を変えた。」 そう言うと博士はおもむろにポケットから錠剤を出した。 これまでの錠剤とは違う形をしている。 「さぁ、ここで私がこの薬を飲めば、これまで通りグッスリ眠れると言えば…貴方はいくら払うかな。」 博士の高笑いは疲れを知らず止まらない。
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