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村の柵の周りをぐるっと回ってところどころに小便を掛けて回らなきゃなんない。妙な奴が村に目星を付けて匂い付けしてないかの確認と、ここにゃ俺っていう強い雄が居るんだから入ってくんなよって目印を付けとかなきゃいけないだろ?
ひと通り終わって村の入り口まで戻ってきた。見上げりゃ満天の星。色々あってここに住み着いてるが、俺にだって親ってもんが居たんだ。
あの晩もこんな星空だった気がするぜ。
◇ ◇ ◇
「いいから俺様の雌になれって言ってるじゃねえか?」
ちょっと身体がでかいからって好き勝手言いやがる。
「はっ! 冗談じゃないわね。何であたしがあんたみたいな貧相な雄の子を産まなきゃいけないのさ?」
ちょ、お袋! 気が強いのも知ってるけど、そりゃ言い過ぎかも?
なんたって状況が悪いって。群れの雄どもが急に押し掛けて来やがったから、お袋だって俺一匹を咥えて逃げるのが精一杯だったじゃんか。
「ボスが目を掛けてるからっていい気になりやがって!」
取り巻きの一匹が吠えてやがる。
「どこの誰だか知らないが、浮気してきて許されるとでも思ってんのか?」
「浮気じゃないね。本気も本気さ。彼のたくましさにあたしはめろめろで、尻尾が真っ直ぐに伸びちゃったくらい」
「この雌、いけしゃあしゃあと! ボス、ちょっと痛めつけてやりましょうや!」
こいつはヤベえ雲行きだぜ、お袋。
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