一人と一匹(1)

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一人と一匹(1)

 ちっ、また絡んでやがる。しかも悪意とは違うからたちが悪い。妙な匂いさせているからすぐに分かるぜ。  人間の雄ってのはどうして一()中盛っていやがるんだか。そんなんじゃ争い事が絶えないだろうし、増えて増えて仕方ないだろうにな。まあ、その通りになっている訳だが。  純粋な肉食じゃないにしても、あんまり増えてしまったら食うもん無くなって困るだろうに、際限なく増えていくんだから性懲りが無いと俺が思ったとしても変じゃないだろう?  まあ、人間なんて牙も無けりゃ力も弱い。中には力がある奴もいるが、それにしたって武器を持たないと攻撃力は低い。走るのも遅けりゃ機敏さも劣る。草ばっかり食ってる連中みたいに増えるくらいしか対抗手段が無いのかもしれないな。  俺が何と思おうとも、相棒が助けてくれと言わんばかりにこっちをちらちらと見てるから傍観している訳にもいかないだろうさ。さて、重たい腰を上げるか。 「またか! この犬、毎度毎度邪魔しやがって!」  身体を割り込ませたら文句を言ってくる。知った事じゃないな。お前の都合を斟酌してやる義理は無い。 「しつこいのよ、あんた。キグノが怒っちゃう前にどこか行っちゃえ」     
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