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仔犬キグノ(2)
今夜のところは何とか落ち着けたな、お袋?
「良かったね、坊や」
メシにもありつけたし、ゆっくり寝ようぜ。
「うんうん、あたしもちょっと疲れちゃってるね。ああ、坊やは温かいよ」
好きなだけ暖を取ってくれ。それくらいにしか役に立てないからな。
南に流れ行くほど夜は冷えるようになってきたな。本当はどっかに棲み付きたいとこなんだが、ここいらは草原性のお仲間が多くてどこもかしこも誰かの縄張りで長居出来ない。
今陽みたいに紫雷狼の縄張りに入り込めりゃのんびり出来るってもんだ。狼系魔獣の縄張りだと当然偵察はやってくるが、俺の顔を見ると見逃してくれる。目こぼししてくれる訳だ。
その様子を見てると俺の親父の正体が知れてくるんだが、こんな暮らしの最中にお袋を責めたりしちゃ可哀想過ぎる。
それでも長居はさせてくれないし、闇犬の縄張りに入ろうもんならすぐに追い出されちまう。お袋が言うには、俺みたいなのが目に付くと奴らは困るんだとさ。変な前例を嫌うんだと。
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