一人と一匹(2)

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一人と一匹(2)

「キグノー! ごはーん!」  おお、メシだ、メシだ。もう外も真っ暗だしな。程よく腹も減ってるぜ。  まだ自分の皿をテーブルに運んでいた相棒が椅子に着くのを待ってから皿の中身に口を付ける。  肉と野菜のごった煮か。匂いからして俺の分を取り分けてから残りに味付けしてから食ってるな。人間が食うのと同じ味付けで出されるとちょっと濃すぎるし。そっちのが美味いのは美味いんだけどな。  本当はがっつきたいとこなんだが、皿の中身をゆっくりと片付けていく。人間はメシを食うのが遅い。俺が普通に食っちまうとすぐに終わって、リーエは一人寂しく食わなきゃいけない。  相棒が食い終わるちょっと前くらいに皿を空にして、ひと口ふた口寄越せって言うくらいがちょうど良い。楽しい食卓ってやつだ。  この家には相棒と俺の二人きりだ。普段は彼女の親はいない。  母親に関しては小耳に挟んだ程度しか知らない。何せ俺が来る前の話だからな。  リーエのお袋さんはクレアヴェスって名前だったらしいが、相棒が産まれて一()かそこいらで病気で死んじまったって話だ。     
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