隣のスバルくん

可愛い人

「何？ どうしたの」
一人何も分かっていない昴くんが前を向いたまま尋ねてきた。

「あんたが悪いのよ。バカ」
波音さんの遠慮のない罵りの言葉に、昴くんは「えー？」と困ったように聞き返す。
「そうたい、昴くんが悪かと」
私もそれに便乗してやった。
「瑞樹ちゃんまで……。ひどか～」
情けない声をあげ、今度こそ昴くんは肩越しに振り返った。眉の端が情けなく下がっている。その様子に私と波音さんは目を合わせ、声を出して笑った。

「はいはい、どーせ俺が悪いですよ！」

空に向かってヤケクソに吠える昴くん。
世界中で有名になってしまった彼は、「隣のスバルくん」のままだった。