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「あんな安物のネックレスのために波音が死んだら、俺はどうしたらいい?」
逃げられない、真っ直ぐな目。
「……ごめん」
珍しく、波音さんが素直に謝った。その彼女をしっかりと抱きしめる昴くん。「勘弁してよ」と溜め息まじりに呟いた。
「だって、宝物なんだもん、あれ」
か細い声は震えていた。
「あの頃、絶対お金なかったのに、買ってくれたものだもん」
ああ、やっぱり。
私も俯く。
躊躇いなく汚い川に飛び込んでしまえるほど、大切なものだったんだ。安物でも、昴くんからもらったから。
私は自分が恥ずかしくなった。何も知らないのに。
「バカだなあ、波音は」
厳しく責めるような言い方だった。それなのに温かく聞こえる。
「バカで、一生懸命で、真っ直ぐで、優しい」
次に言った言葉は震えていた。
そして、ハアッと息を吐きながら彼女を引っぺがす。思いを切り替えようとしたのが見えた。
この話はもう終わりだ。それを確信させる笑顔だった。
「それにしてもハノンちゃん。その下着、可愛いねえ」
「!?」
「俺ピンクってそそられるな~」
思わず私まで波音さんの胸元を見てしまった。
今日は暑かったもの……。シャツを着てないのも仕方ない。
びっしょり濡れた上着が体に貼り付いて、先ほど見えたパンツとお揃いのブラが透けて見えていた。
慌てて前を両手で隠す波音さん。ニシシ、と嬉しそうに笑う昴くんを睨んだ。
「早く言ってよ!バカ!」
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