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昴くんにおんぶされた波音さんはやはり不機嫌そうだった。
「靴買ってあげるから。機嫌なおして」
「いい。自分で買う」
言い方は本当に可愛くない。おんぶまでさせられて、全然悪くない昴くんが困っている。
私は彼女の背中を見て苦笑いした。
昴くんには言ってあげないけど。
波音さんがどのくらい彼を好きなのか、分かっちゃった。
悔しいけど認めよう。
私は快晴の空を見上げて、明るい溜め息を吐いた。
そんな私を、波音さんが振り返った。何か言いたげな様子に、私は近くに顔を寄せる。
「言っとくけど、最初からバレてるから」
小さな声で、彼女は口をへの字に曲げた。
「え……」
何が? と言いかけ、私はハッとした。もしかして、彼女気づいてた!? 私の、昴くんに対する想い。
「だから、ごめんね」
波音さんは、プイ、と顔を背ける。
浮かれた昴くんが放り投げた言葉が私を傷つけたことも。
知ってたんだ。
泣き出してしまう前に。私の「好き」が発覚する前に。彼を止めてくれたんだ。
「いいよ。しょうがないもん」
バレてるなら仕方ない。私は決まり悪くて、口を尖らせた。
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