可愛い人

3/4
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
昴くんにおんぶされた波音さんはやはり不機嫌そうだった。 「靴買ってあげるから。機嫌なおして」 「いい。自分で買う」 言い方は本当に可愛くない。おんぶまでさせられて、全然悪くない昴くんが困っている。 私は彼女の背中を見て苦笑いした。 昴くんには言ってあげないけど。 波音さんがどのくらい彼を好きなのか、分かっちゃった。 悔しいけど認めよう。 私は快晴の空を見上げて、明るい溜め息を吐いた。 そんな私を、波音さんが振り返った。何か言いたげな様子に、私は近くに顔を寄せる。 「言っとくけど、最初からバレてるから」 小さな声で、彼女は口をへの字に曲げた。 「え……」 何が? と言いかけ、私はハッとした。もしかして、彼女気づいてた!? 私の、昴くんに対する想い。 「だから、ごめんね」 波音さんは、プイ、と顔を背ける。 浮かれた昴くんが放り投げた言葉が私を傷つけたことも。 知ってたんだ。 泣き出してしまう前に。私の「好き」が発覚する前に。彼を止めてくれたんだ。 「いいよ。しょうがないもん」 バレてるなら仕方ない。私は決まり悪くて、口を尖らせた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!