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プロローグ
彼の指先が触れた瞬間、電気が走った。
性的な雰囲気なんてまるでない、ごく普通の接触。
それなのに。感電したみたいに首筋から背中にかけてなにかがびりりと走り、体全部の細胞が一気に泡立つようで、思わず喉を鳴らしてしまった。
それから彼の手をみるだけでおかしくなった。それまで彼のことを男として意識したことなんかなかったのに。
確かにいい人だとは思ってた。見た目だってちょっと年はいってるけど悪くない。というか私が気づかなかっただけで結構いい、のかも。
業界では有名人なのに、そんなこと知ったこっちゃない、といわんばかりの人なつっこい笑顔。ふいに仕事モードに切り換えたときに見せる、強い光を帯びた切れ長の瞳。俯いたときの顎の綺麗なライン。柔らかそうな茶色の髪の毛。
中身だってそう。
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