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「ゲームをしているときは酷くクールにみえましたからね。さっき高柳さんと話しているところをみたら、表情が柔らかくてびっくりしましたよ」
健史の言葉にふと神谷さんが静かに微笑んだ。
「それはそうだよ。つきあっている彼女と話すときくらいはリラックスするよね」
健史は僅かに眉を寄せた。たぶん、初めてあった人なら気づかないくらいの、微々たる動きだった。けれど神谷さんはじっと健史の顔をみつめている。その変化すら見逃していないように。
健史は全く動じる様子もなく口元を緩めた。
「……へえ。格ゲーのトッププロでも彼女には骨抜きにされちゃうんですね」
なにも考えていないような顔をして、変な角度からつっこみをしてくるのは健史の得意技。あわてて遮ろうとしたら、神谷さんがいきなり吹き出した。
その笑いは馬鹿にするようなものではなく、本当に吹き出した、という感じで、私も健史も虚をつかれたように神谷さんをみる。
「骨抜きねえ。確かに抜かれたかもしれないな。つきあいだしたばかりだし、彼女が可愛くて仕方ないから、難しい顔なんてしていられないよね。北川君はそうじゃない?」
可愛くて仕方ないから。そういわれ、体温がまた1度くらいあがってしまう。健史は一瞬驚いたように瞳を見開いたあと、眉を微かにあげてため息まじりに小さく笑った。
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