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「神谷さんなら、絶対エロオヤジになんてみえませんから! そもそもわたしからお願いしてるんだから、セクハラじゃないですし。お願いします!」
彼に向かって両手をあわせ頭をさげる。なんだかいつも神谷さんに嫌がられて、無理矢理私が頼みこむパターンになっている。
神谷さんは真面目な顔をしてまだうーん、と唸っている。お願いします! ともう1度頭をさげると、盛大なため息がきこえた。
そっと顔をあげると、視線がぶつかる。
また押しきられた。そんなふうに思って、ちょっと呆れている表情。マスクをしていてもわかる。
「仕方ないなあ。1回しかやんないから、ちゃんと覚えてよ?」
マスクの上からでてる目は、困った風に細められているくせにどこか優しくて。それをみた瞬間、心臓がドキリと大きな音をたてた。
ありがとうございます! そう言って慌ててそこから目をそらす。
それから。
真後ろに神谷さんの気配がして、わたしの体を包むように右手と左手がのびてきてゲーム台に置かれた。
こ、これは……想像していた以上に体が密着する?!
さきほど感じたオーデコロンの香りがふわりと周りの空気も包んだ。パブロフの犬みたいな条件反射で、かあっと顔に熱がのぼっていく。
「上から手を握るよ?」
耳元でそうささやかれたら、首筋辺りがぞくり、と震えた。
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