触れていたい人

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「神谷さんの技に圧倒されちゃって。ぼんやりしてしまいました」  神谷さんは本当にぶっといって吹き出した。 「これくらい小学生でもできるよ? 大袈裟だなあ」 「酷い! でもいいんです、初心者なんだから。会社のみんなに、神谷さん直伝の技を教えて貰ったって自慢します!」 「この程度の技でオレの直伝なんて会社で話されたら、スポンサー契約解除されるからマジでやめて!」  目はからかうように笑っているくせに、口ぶりだけは真面目だから、つい吹き出してしまう。こうして話をしていると笑いが止まらなくなる。  神谷さんと会話をするのは以前から楽しかった。けれど、今みたいにわくわくして、ドキドキして少し胸がいたくて。それでもずっとずっと話していたい。触れていたい。  そんなふうに感じたことなんかなかったのに。  この気持ちは逃げも隠れもできない状態で、心のなかに、どん、といきなり落ちてきてほぼ占有してしまった。  神谷さんが好きなんだ。    強いその思いは、わたしを小さく震わせた。
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