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「あの、すいません!」
急に背後から声をかけられ、ふたりでふりかえった。そこには男の人、3人。
「あの、プロゲーマーの神谷さん、ですよね? もし良かったら、なんですがオレらと対戦してもらえませんか」
3人のなかで一番年長らしい三十代くらいの男性が、丁寧な口調ではなしかけてきた。表情をみると少し緊張しているようで、固い。
神谷さんは一瞬だけ視線を宙にさまよわせたあと、それをわたしに着地させた。
「少しやっても大丈夫?」
慌てて何度も頷く。
「勿論です。神谷さんの練習モードじゃないプレイ、みてみたいし」
彼はそっと目を細めて笑った。見慣れていたはずのその人懐っこい笑みに釘付けになる。神谷さんは無造作にマスクをとると、ポケットにしまって彼らに言った。
「ちょっとだけなら、いいですよ」
男たちの表情が緩み、本当に嬉しそうに顔をみあわせて微笑みあった。
「すいません、デートの最中に。ありがとうございます」
その瞬間、動揺しすぎて盛大にむせて咳き込んでしまった。
そうそう、デート中なんで少しだけね。
楽しそうにそういって神谷さんは笑った。
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