恋した人

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「本当にすいませんでした。神谷さんがゲーセンにいたら、プロ野球選手がユニホーム着て、町中歩くようなものなのに。広報のくせに配慮が足りなくて」  ため息混じりにそういうと、神谷さんが吹き出した。 「面白いこというね。とにかく気にしなくていいから。プロゲーマーなんて、見てくれるファンがいなきゃ、成り立たない商売だし、できるだけファンサービスはするって決めてるの。ただ基本的には面倒くさがりだから、とっかかりは億劫なんだよね。俺のそーゆーとこ、もう1年くらいのつきあいなんだから知ってるでしょ?」  彼の気遣いが、今はなんだか苦しい。詰めの甘さ、気がまわりきらないのがわたしの欠点。それは電光堂にいた頃から痛感してる。まだまだダメだなって思ってしまう。 「いえ。今日はわたしのためにわざわざ面倒くさいことをさせてしまったうえに神谷さんひとりで、全部対応してくださって……あー!!!」  さらに思い出してしまった。一番やってはいけなかったことを。頭を抱えてしまった。どうした? と覗きこんでいる神谷さんをおそるおそる見る。 「神谷さん、いやだっていっていたのに、わたしの後ろから操作してもらったじゃないですか。あれを神谷さんのファンに見られていたら、謝罪しても謝罪しきれない……」  そういっても神谷さんは目尻のしわを深くして、あああれ、エロオヤジって言われてるかもねと大笑いするだけ。責めるどころか、面白がってくれて。なんだか泣きたくなってくる。
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