愛したひと、愛するひと

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「楽しそう。何を話していたの?」  里奈が買ってきたペットボトルやコーヒー缶を棚に置いて、ゆっくりと背中を支え、希を起き上がらせる。 「ヒミツだよ。ね?」  希はつぶらな瞳をぱちぱちさせて、一人前に俺に目配せするから、おかしくなる。 「そうだね」  俺も頷いてみせると、希は満足そうに、里奈に蓋をあけてもらったお茶を、ごくごく飲む。 「あら、いつの間にか仲良しになってる」  里奈は俺にもコーヒー缶を手渡してくれたから、サンキュといって受け取る。 「俺、小さい子供なんて、身近にいないからわかんないけど、女の子って、みんなこんなに大人びてんの?」   「希は大人に囲まれて大きくなったからかな。普通の子よりはマセているかもしれない」  そういいながら、里奈は愛おしげに希の髪の毛を撫でた。  希は神妙な顔をして俺たちの会話を聞いている。きっとこうやって大人の話にいつも耳を傾けているのだろう。  里奈がハッしたように俺をみた。 「大介、仕事は?」 「あー、明日? もう今日か。午後から練習会あるだけ」   「……大介の貴重な時間、使わせちゃったね」 「へーき。ここに来ても、なんもしてないけどな」  苦笑しながら貰ったコーヒー缶の蓋をあけ、口をつける。夜中にのむ微糖コーヒー。じわりと体にしみる感じが心地いい。  里奈はゆっくりと首を振った。 「来てくれてくれて、本当に心強かったよ。でも病院にいればこのとおり、安心だから。ありがとね」  里奈がまっすぐ俺をみつめて微笑んだ。昔よくみた、心から嬉しい時にでる、飾り気のない笑みだった。  懐かしいな。そう思い目を細める。
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