串カツパラダイス

1/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

串カツパラダイス

 オフィスの掛け時計の針が六時を示した瞬間、僕はパソコンの電源を切り、帰り支度を始めた。 「お先に失礼しまーす」  残業している同僚と上司に挨拶をして、タイムカードを押す。 「お前、今日はやけに早く帰るんだな。彼女とデートか?」  同僚の一人が冷やかしに声をかけてきたが、かまっている暇はない。僕はまぁねと適当に相槌をうって、小走りで会社を出ていった。  今日は二十八日。僕にとっては、月一回の楽しみなイベントがある日だ。今日のために、ここ数日サービス残業を続けて仕事を片付けたのだから、心置きなく帰ることができる。  心地よい空腹感で電車に揺られているうちに、目的地である上前津駅に到着した。  いつもより賑やかな大須商店街を通り抜け、赤門通りに出た。通りには、一ヶ月振りに色とりどりの屋台が並んでいた。  そう、毎月二十八日は大須商店街赤門通りの縁日の日なのだ。僕は目的の串カツ屋へと歩みを進めた。  その日の気分によって、お好み焼き屋に寄ったり飛騨牛串焼きの屋台で立ち食いをすることもあるけれど、なんといっても大須の縁日といえば、串カツだ。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!