串カツパラダイス

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 いつものオヤジの口上をBGMに黙々と食べ続ける。  串カツ・ビール・どて煮・キャベツ。この組み合わせで、いくらでも食べられる。僕はいつも十本ぐらいは食べてしまうのだが、以前一緒に来た友人は、三本でもう十分だと言っていた。  串カツの屋台は他にも何軒か出ているのだが、ここの串カツが一番美味しいと僕は思う。どこが違うのかと聞かれても上手く説明出来ないけれど、美味しそうに食べている他の客の賑わい、串カツを揚げながら発せられる親爺の薀蓄や(文字通りの)オヤジギャグ等を含めた雰囲気も、味付けの一つなのかもしれない。 「いつもながら、いい食べっぷりですね」  若い女性の声で、僕は振り返った。  そこには派手な化粧の女性が立っていた。彼女は半年程前からこの屋台で見かけるようになった女性で、いつの間にか一緒に話しながら飲み食いする仲になっていた。この屋台には老若男女様々な客が集まるのだが、若い女の子がビールを片手に、独りで串カツを頬張っている姿は珍しい。 「こんばんは。今日は早いね」 「うん、今日は課題もなかったから、早めに来られたの」  一昔前のヤマンバギャルのような、素顔が想像できない程の厚化粧のせいで、一見年齢不詳に見えるが、どうやら学生らしい。よく見ると顔のシワや弛みも無く肌も綺麗だから、まだ二十歳そこそこなのだろう。     
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