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ここでは大道芸イベントが開催される事が多いが、今日は地下アイドルの合同ライブイベントをやっているようだ。地下アイドルとは、テレビなどのメディアにはほとんど露出せず、ライブイベントを中心に活動するインディーズ系アイドルの事だ。人だかりでよく見えないが、原色系のステージ衣装に身を包んだ女の子が、踊りながらアニメの曲を唄っているようだ。元々メジャーなアイドルにも興味のない僕だから、時間潰しにならないなとそのまま通り過ぎようとした、その時だった。
「皆さん、こんにちはー!北斗七星からやって来た宇宙人系アイドル、北斗七星人のホクトでーす。地球侵略するためとかじゃなくて、ノーベルアイドル賞を取るのが目的でーす」
聞き覚えのある声で、聞き覚えのあるような自己紹介が耳に入ってきた。人ごみを掻き分けて、なんとかステージがよく見える場所までたどり着いた。
ステージの上で唄っているのは、紛れもなく、ホクトだった。串カツ屋台で一緒にいる時の厚化粧ではなく、控えめなナチュラルメイクだが、間違いない。曲が進む内に彼女も僕に気がついたらしく、一瞬気まずそうな表情になっていた。
「ホクトちゃん、地下アイドルだったんだね」
「……黙っていて、ごめんなさい」
別に彼女を責めるつもりはなかったのだが、落ち込んだ表情で謝罪されてしまった。
夜になり、僕と彼女はいつもの串カツ屋の前にいた。しかしお互いなんだか気まずいようで、僕も彼女も食が進まない。
「いや、それはもういいんだけど。どうしていつもそんな……なんて言うか、素顔がわからなくなるような化粧をしているの?ステージの時のナチュラルメイクの方が絶対可愛いのに」
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