最終話「あなたがいるから」

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「亜利紗の口癖だよ。これからの社会は良妻賢母は古くて、夫が妻を立てて賢く父親をやる時代なんだってさ。俺にもそれを目指せって」 「ふーん。あいつが言いそうな台詞だな」  一砥は興味なさげに呟いた。  そしてチラと背後の扉を見つめ、「それにしても、いくら派手で目立つ記者会見にしたいからって、あそこまでやる必要あるのかな……」と呟いた。  一砥の懸念の元は、会場の隣の部屋で出番を控えている花衣と亜利紗の二人だった。  今日この後すぐ、剛造からフィオレンツァの統括デザイナーとして紹介される花衣と、カリスの社長として紹介される亜利紗の二人は、同時に一卵性双生児であることも公表し、高蝶家の当主を二人で担うことも発表する予定でいた。  さらに二人が双子であることを印象づけるため、今日亜利紗と花衣は同じ黒髪ロングの髪型にし、メイクも似せて二人で花衣がデザインした黒と赤の対のドレスを身につけている。  妊娠四ヶ月の花衣だったが、そのお腹はまだほとんど目立たず、五年前と変わらぬスタイルをキープしていたために、同じ髪型に同じメイク、同じデザインのドレスを着ると、二人は鏡に映した影のようにそっくりだった。     
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