最終話「あなたがいるから」

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「けど亜利紗のこの戦略は成功すると思うよ。さっき控室で並んだ二人を見て思ったけど、本当になんて言うか……一人でも充分魅力的だけれど、二人でいると一層輝くと言うか……」  気遣わしげな一砥に向かい、奏助が言う。  その点に異論のない一砥も、溜息混じりに頷いた。  だが妻が注目されればされるほど、その名声が上がるほどに彼の心は落ち着かなくなっていた。  デザイナーとしての実績を積み、私生活では夫に女性として妻として深く愛され自信をつけた花衣は、以前のようなおどおどした態度は消え、他人の目を真っ直ぐ見て自分の言葉で意志をはっきりと口に出来る、そんな強い女に成長した。  O-Cのショーに亜利紗と一緒に出た際、良く似た二人でありながら全く違う印象を与えたのは、亜利紗の表情に滲み出ている自信とプライドに対し、隣の花衣はあまりに控えめで表情も大人しすぎたからだ。  あの時の自信なげな少女は消え、亜利紗の隣に立つ花衣はもう、妹に比肩するだけの自信とプライドを身に着けていた。  約六年の歳月を経て、赤の他人に見えた双子は、驚くほど良く似た美人姉妹になった。  剛蔵の長い口上が済み、ようやく花衣と亜利紗が登場する。  途端、会場は大きなどよめきに包まれた。  黒いドレスの花衣と赤いドレスの亜利紗が登場すると、会場中のカメラのフラッシュが一斉に焚かれ、まばゆいその光に一砥は目を細めた。     
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