最終話「あなたがいるから」

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 激しく明滅する光の中で、花衣は亜利紗の隣で女神のごとき微笑を湛え、その美しい笑顔を見ただけで、一砥はこのプロジェクトが成功するだろうことが分かった。  一時間後。  記者会見の後は同じホテルで関係者を招いたパーティーが華やかにスタートした。ゲストには一色美里やO-Cの役員に、著名なモデルやタレントも多く招かれていた。  高蝶泰聖は二年前に末期癌で亡くなっており、花衣と亜利紗の両親に、香奈達叔母夫婦も来ていた。一砥の母、真邉藤緒もいた。  すでにマスコミは退席させられていたが、ホテルの前には大勢のテレビ局や新聞社の車が列をなし、パーティーに出席した芸能人から少しでも情報を引き出そうと躍起になっていた。  月光堂グループの二大プロジェクトの発足に加え、その中心人物である亜利紗と花衣が実は生き別れの双子で、共同で高蝶家当主を務めることが一番の話題をさらい、明日のワイドショーやスポーツ紙はこぞってこのニュースで特集を組むだろう。  亜利紗と花衣にはファッション誌のみならず経済誌などからの取材も殺到するだろう。  今の花衣は日本を出発する前の気弱で何も持たない無力な少女ではなく、日本有数の名門華族の当主であり、ファッション界注目の若手デザイナーであり、彼女の夫である一砥の名前はもう何の意味も持たなかった。     
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