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そう思っていると、私の願いが叶ったのか、新しいママは居なくなっていた。
それから一週間が経っても、新しいママは家に来なくなっていた。
「お父さん。新しいママは?」
「……さぁ。どこに行っちまったんだろうな。まぁそんなことはどうでもいいだろ。ほら、今日の飯。お父さんちょっと出かけてくるから」
そう言ってお父さんは家を出ていった。
帰ってきたのは、出ていってから三日経ったあとの事だった。
「……お父さん、その女の人は?」
「ああ。お前の新しいママだ」
「新しい、ママ……」
ーーその言葉を聞いた瞬間、私はお母さんのいた寝室に逃げ込んだ。
怖かった。また暴力をふるわれるのが。また殴られるのが怖かった。
今度の新しいママは、前の新しいママとは違うかもしれない。
けど。それでも私は、新しいママという存在が怖くて仕方がなかった。
ーー出ていって欲しい。私とお父さんの家から、出ていって。いらない。もう新しいママなんていらない。
そう思い布団の中にくるまっていると、新しいママの声が聞こえた。
「ーー大丈夫よ。私はあなたの事を殴ったりなんかしない。だからお願い、顔を見せて頂戴」
……優しい声だった。
昔のお母さんの声に似ているような気がした。
そのせいで、私は思わず声を上げて泣いてしまった。
すると扉が開いて、新しいママが私の事を抱き締めてくれた。
温かかった。そして何よりも、こうして抱き締められたのが久しぶりだった。
いつもお父さんや、新しいママからの暴力に怯えていた。
何をするにも、殴られて罵られて。
怖かったし痛かった。けど、今はもう、そんな怖い思いも痛い思いもしなくて済むんだと思った。
私はそのまま、新しいママの胸の中で眠りについた。その時うっすらと聞こえたお父さんの声は、酷く冷たかった。
「ーーやっと寝たのか。手間のかかるガキだな」
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