新しいママ file.1

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そう思っていると、私の願いが叶ったのか、新しいママは居なくなっていた。 それから一週間が経っても、新しいママは家に来なくなっていた。 「お父さん。新しいママは?」 「……さぁ。どこに行っちまったんだろうな。まぁそんなことはどうでもいいだろ。ほら、今日の飯。お父さんちょっと出かけてくるから」 そう言ってお父さんは家を出ていった。 帰ってきたのは、出ていってから三日経ったあとの事だった。 「……お父さん、その女の人は?」 「ああ。お前の新しいママだ」 「新しい、ママ……」 ーーその言葉を聞いた瞬間、私はお母さんのいた寝室に逃げ込んだ。 怖かった。また暴力をふるわれるのが。また殴られるのが怖かった。 今度の新しいママは、前の新しいママとは違うかもしれない。 けど。それでも私は、新しいママという存在が怖くて仕方がなかった。 ーー出ていって欲しい。私とお父さんの家から、出ていって。いらない。もう新しいママなんていらない。 そう思い布団の中にくるまっていると、新しいママの声が聞こえた。 「ーー大丈夫よ。私はあなたの事を殴ったりなんかしない。だからお願い、顔を見せて頂戴」 ……優しい声だった。 昔のお母さんの声に似ているような気がした。 そのせいで、私は思わず声を上げて泣いてしまった。 すると扉が開いて、新しいママが私の事を抱き締めてくれた。 温かかった。そして何よりも、こうして抱き締められたのが久しぶりだった。 いつもお父さんや、新しいママからの暴力に怯えていた。 何をするにも、殴られて罵られて。 怖かったし痛かった。けど、今はもう、そんな怖い思いも痛い思いもしなくて済むんだと思った。 私はそのまま、新しいママの胸の中で眠りについた。その時うっすらと聞こえたお父さんの声は、酷く冷たかった。 「ーーやっと寝たのか。手間のかかるガキだな」 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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