教室の花瓶

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教室の花瓶

 教室の後ろにある棚の上には、いつも花の活けられた花瓶が置かれている。  誰か世話をしている人がいるらしく、花は毎日、種類も本数も違う。  食い日人知れず花を取り換えるなんて凄いなと、ある日友達に話したら、花どころか、誰にも花瓶自体見えていなかった。  慌てて話をごまかしたけれど、どうやら花瓶もいけられた花も俺にだけ見えているらしい。  それが判ってから気づいたことがある。  花の本数や種類と、クラスに出る病人や怪我人の数が合っているのだ。  赤色の花は怪我人。白色の花は病人。黄色は特に何もない。  これに気づいてから、黄色の花だけが活けてあると安堵するようになった。その代り、赤や白の花だとそわそわする。  毎朝毎朝、登校するたび花の色と本数に意識を奪われる。  その花が今日はない。  棚には空の花瓶が置かれているだけ。  もしかしたらついに見えなくなったかとも思ったけれど、初めての、花のない空の花瓶を見て感じたのはただただ不吉な予感だった。  花がないなら今日は一日何もない。そう信じたいけれどどうしようもなく胸が騒ぐ。  はたして、今日はいったいクラスに何が起こるのだろう。 教室の花瓶…完
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