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「あっ」
そんな事を考えている途中で、ふと夢莉はある「メニュー」に目を止め、凝視した。
「何か食べたいモノでもありましたか?」
「あっ、えと!」
「何でもおしゃって下さい。大体のモノは出来るはずですので」
「あっ、ありがたい話なんですけど、あの……実は、お金が……」
あまりにも空腹で賢治の誘われるがままここまで来てしまった。だけど、ここはやはりキチンと事情を説明しないといけない……と、夢莉はそう切り出した。
「ああ、大丈夫ですよ」
「えっ?」
「すみません。さっき警察のかたに説明していたのを盗み聞きしてしまって」
「あっ、いえ」
賢治は申し訳なさそうな顔をしていたけど、そもそもの話。夢莉がお金を持っていない事が問題なのだ。
「ですから、どうぞお気になさらずお好きなモノを」
夢莉はその親切心に感謝とお言葉に甘えて……メニューを見た時から目について気になっていた『ナポリタン』を頼んで見ることにした。
すると、賢治は小さく頷きながら「かしこまりました」と言い、さっそく準備に取りかかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「…………」
夢莉がこのお店に招かれた時には多分、営業時間はすでに終了していた事は、調理工程には何も滞りなくスムーズに行いつつ、ジーパンを履いているところを見てそう感じていた。
「大変お待たせ致しました」
「あっ、ありがとうございます」
目の前に置かれた『ナポリタン』は、出来たての象徴ともいえる湯気がたっており、キレイなオレンジ色をしている。
「すみません。いつもであれば『ナポリタン』の前にサラダも出しているのですが」
「気にしないでください。突然お邪魔してしまったのは私ですから」
「すみません」
「いえいえ」
お互いがお互い謝罪をし続け、一向に話が進みそうにない事は謝罪をしながらお互い感じていた。
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