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「ふふ」
「??」
「このままでは謝罪をお互いするだけで、せっかくの『ナポリタン』が冷めてしまいますね」
「あっ」
「とりあえず今は、ゆっくりお召し上がりください」
「そっ、そうですね」
そう言われてもう一度見た『ナポリタン』は、よく写真などで見たことのあるモノだ。
でも、この分かりきっている見た目の感じがいい。
そんな「今まで見たことがない!」とか「新感覚!」とか奇抜な見た目とか新しいでなくていいのだ。
確かに新しいさというのは必要だとは思うけど、こうして「変わらないモノ」があってもいい。
「はぁ」
そして、この鼻をくすぐるトマトケチャップの香りがまたいい。少し焦げたような匂いも食欲をそそる。
もちろんアルデンテにゆであげられたパスタも、ケチャップにからめられたパスタにウインナー。野菜は炒められた玉ねぎに彩りとして輪切りにされたピーマンもいい。
「…………」
小さい頃、周りの子供たちは好きな食べ物としてあげているのは大概がカレーライスとかハンバーグと言っている中、夢莉は『ナポリタン』と頑なに言っていたらしい。
ただ、夢莉は未だになぜあの頃そこまで『ナポリタン』が好きだったのか、全然覚えていない。
多分「最初に食べた時の相当衝撃的だったのだろう……」とは思うけど。
でも、ここ最近は母が作った『ナポリタン』を食べる事が出来なくなった。
それでも食べたくなり自分で作った事もあったけど、正直食べてみてもここまでの感動もなかった。
決して美味しくなかった……というワケではなかったと思う。
――だけど、夢莉の中で決定的に『何かが足りない』と思った。
それ以降しばらく自分で作る事もなく、どこかで食べようにもそれを食べるためのお金もそこまで余裕がない……という色々な要因が重なり、食べていなかった。
ただせっかくこういう機会なのだからこそ、久しぶりに食べてみたくなった。
「……はっ!」
ここにきてあまりにもあつい眼差しを向けておきながら、何もせず手をつけていない。
しかし、湯気が止まっていないところを見ると、まだ暖かいようだ。
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