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『最後くらい……家族みんなで過ごしたいな』  そんな時、母は病室で窓の外をジッと見ていた独り言を偶然聞いてしまった。  普段はそんな弱気とも取れるような事を一切言わない母さんだったが、やはり『病』というのは人を不安にさせるのだろう。 「……」  いつもは若々しく見えていた母も、その時ばかりは珍しく年相応に思えた。  そして、母のそんな言葉を聞いて「何もしない」という選択肢が夢莉の中には存在していない。  だからこそ夢莉は今までの感謝も込めて、その願いを叶えたいと思った。  それに、いくら一緒に遊んだ記憶がほとんどなかったとは言え、親類(しんるい)にあたればよほど特殊な職業でない限り職業くらいは簡単に分かると思っていた。  ただ色々と話を聞いて驚いたのは、夢莉が小さい頃に一度引っ越しをしていたという事だ。  夢莉自身も覚えていなかった事には驚いた。  多分、母が父と離婚した後に引っ越しをしたのだろうと思うが、別にそれに対してとやかく言うつもりはない。  それよりも、問題は「父さんがまだそこにいるのか」という点だ。 「……よし」  ただ、元々夢莉はあれこれ色々考えて立ち止まることが苦手なところがあった。だから、結局。とりあえず「行って確認した方がいい」という考えに至った――。 「…………」  これまでの経緯を聞いた賢治が「そうなんですか」と呆れ顔で言われるか、はたまたそこまで深刻に取られず笑顔を返されるか……この二つではない何かしらの反応をされるだろうと思っていた。 「なるほど……」  しかし、どうやら賢治はかなり真面目な性格らしく、夢莉の話を深刻に捉えてくれたようだ。
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