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「すみません」
「そうですか。いえ、私も突然こんな事を言ってしまって……」
――今の言い方は、賢治が明らかに勘違いをしているとすぐに察した。
「あっ、いえ。そうではなくてですね」
「はい?」
なるほど、生まれも育ちも日本でずっと日本語で話しているにも関わらず、勘違いが起きてしまう辺り「外国人が日本語は難しいと言うのも分かる」なんて事を思っている場合ではない。
とりあえず、すぐに訂正をしないと、せっかくのお話がこのままでは頓挫してしまう。
「すみません、言い方が悪かったです。えと……あの、しばらくお世話になりますという意味で……その」
それでも、自分の言い方のせいで話がなかった事になる事、賢治の優しさを無下にしそうになる前に、夢莉はすぐに訂正した。
「……」
すぐに訂正した事により賢治はが何を言いたいか理解してくれたらしく、すぐに「ああ!」と言って理解を示した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『――姿を確認しました。やはりあなたの思った通りです』
『そうか、これからも報告頼む。だが、決して悟られるな』
それだけ言うと、電話越しの相手はこちらから「分かりました」という言葉を言う暇も与えずに一方的に電話を切った。
「…………」
所詮、俺の言葉なんて『あの人』にとってはただの雑談とか戯言ぐらいにしか思っていないのだろう。
そう、こんな対応なんていつもの事だ。
今更、それに対して憤りとかも覚えないし、そもそも何も思わない。ましてやそんな感情を抱くだけ時間の無駄な話である。
「……」
感情を表に出す事自体とても疲れるから、感情を露わにするだけ無駄だ。
「それに、追加のメッセージはメールで来る……と」
そのメールの内容をすぐに確認すると、確認した人物は小さく「フッ」笑って送られてきたメールを削除した――。
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