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 一応、スマートフォンは持ってはいる。  だからこういった時、大体は「友達を頼る」というのがセオリーだとは思うが、今回の『目的』はではない。 「そもそも友達なんていないし」  中学の頃は友達が何人かいた。  しかし、夢莉はそれまで仲が良かった子たちとは違う高校へと進学した。  最初は結構頻繁に会って遊ぶ事もあったが、時間が経つとそれぞれ部活や勉強に忙しくなり、友達には彼氏が出来た。  それに夢莉はこの頃からアルバイトを始めた事もあり、次第にみんな疎遠になってしまった。  大学生になってもアルバイトと勉強の毎日。新しく友達が出来る事もなく、そもそも遊ぶ暇もなく、(せわ)しない日々を過ごした。  そして『ある目的』のために、今まで貯めたアルバイト代を当てた。  ただそれでもアルバイト代だけでは心許ない事が分かり、夢莉は大学入学当時から住んでいたアパートを出て実家に戻った。  ちょうど実家は諸事情で誰もいなかった事と、アパートからさほど離れていなかった事もあり、色々とちょうどよかったのだ。 「こういう事が起こった時のために、アプリとか色々登録しておけば良かった……って、そうも言ってられないか」  電子マネーなどスマートフォンには色々と便利な機能があるが、アプリを登録するだけではとても外食なんて出来ない。  そもそも、日々をギリギリで生活している人間に、その目的以外に貯金をするという事はどのみち無理な話だった。 「はは……」  ここに来る。そして、来た後の事……などなど色々と予定を計画を立てて、予め必要な単位も取った。  しかも、大学はちょうど「夏休み」という絶好のタイミング……だったというのに、さっきのひったくりでその全てが台無しだ。  しかも、この『目的』がすぐに終わるのか夏休みいっぱいまでかかるのか、はたまたもっと時間がかかってしまうのか……そういった目処も全然たたない事から、夢莉は先日アルバイトも辞めてきた。 「知り合いもいないし、どうしようかな」  最悪、この偶然見つけた『公園で野宿』というのも覚悟しないと……と考え込んでいると――――。
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