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「キャー!」 「!?」  そんな時、この公園よりも離れたところから女性の悲鳴が聞こえ、驚いて辺りを見渡すと、公園の入り口付近で一人の女性が倒れこんでいる姿が目に入った――――。 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 「どうされたんですか!」 「あっ、あの自転車にカバンを」  近寄った夢莉にそう言って女性が(ゆび)さした先にいたのは……フードを深く被り、立ちこぎで去っていく人影だった。 「……あれか」 「え」  昔から夢莉は真剣になればなるほど声が低くなるらしく、その声を聞いた女性は怯えた様な表情になっていた。 「あっ」  女性の表情に気が付き夢莉は軽く咳払いをして、気を取り直した。 「とっ、とりあえず警察に連絡して下さい」 「はっ、はいっ!」  夢莉はすぐに女性に指示を出し、さきほど視線に入った人物が運転する自転車の後を追いかけた――。 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 「は……っ! は……っ!」  すぐに後を追いかけたものの……夢莉の足では最初から走っている原付のバイクに追いつくことは出来ないという事は、本人がよく分かっていた。  ただ、走り始めや走っている自転車……それもロードバイクなどでなく、普通の通学用の自転車であれば、ギリギリ追いつくことが出来るくらいの足の速さはあると自負している。 「っ!」  でも、それはでの話であって、今の空腹の状態が次第に夢莉の足の速さをゆるめてしまう。  ――正直、かなり苦しい。  しかも、追いかけている自転車を運転している方はかなり余裕があるのか、もう少しで届きそうなのに……ギリギリ届かないという距離をワザと保っている様にも見える。 「へっへーんだ!」  夢莉の走っている位置からではさすがに顔までは分からない。でも、声の感じからどうやら引ったくり犯は未成年の様に感じ、その上分かりやすく夢莉を小バカにしている。  現在進行形で走っている夢莉にはたとえその声が正確に聞き取れなかったとしても、相手が「私をバカにしている」という事は何となく分かる。
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