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◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 「すみません。少し細い道を入る事になるのですが」 「あ、いえ」  そう言う賢治のお店は、細い道を通った路地裏にあるらしい。 「その大丈夫で……。うぅ、すみません」 「ふふ。よっぽどお腹が空いているのですね」  なんて賢治は笑ってくれたが、一応『人前』ということもあって夢莉は赤面が止まらない。 「すみません」 「大丈夫ですよ。それに、ここら辺は居酒屋が多いですし、いい匂いがしていればそうなっても仕方のない話ですよ」  言われてみれば、もうすぐ日付が変わる時間帯なのにも関わらず、路地裏のお店からはお酒が入っているからなのか、結構大きな声で話しをしている声が至る所から聞こえる。 「あの、あなたのお店というのは居酒屋ですか?」 「いえいえ、違います」 「そっ、そうですか」 「何か問題でも?」  この様な聞き方をしてしまえば、こう聞かれても無理もない話。でも、この路地裏に入って目につくのはどこも居酒屋ばかりだ。 「一応、私のお店にも酒は置いてあります。ですが、居酒屋……という程お酒に重点は置いておりませんのでご安心下さい」  そう言いつつ賢治は細い道を進んで行く――。 「さて、ここです」 「こっ、ここ……ですか?」 「はい。ここです」 「…………」  そして、賢治が立ち止まったのは『レトロ』という言葉が似合いそうな古い洋風の外装をした小さな建物だった――。 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 「こちらで少しお待ちください」  賢治は、夢莉を招き入れる前に「少し明かりを点け行きますので」と制し、扉の前で待たせた。 「お待たせいたしました。どうぞこちらへ」  ものの一分も経たずに開けてくれた扉の先には、ランプの光の様なオレンジっぽい淡い光が広がっている。
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