ヘンリー

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 どんなに不気味で薄気味悪くとも、間違いなく此処は教会なのだと実感をしてしまう。ならば今から言う言葉は、これは懺悔なのかもしれない。ヘンリーは深く息を吸い込むと、ゆっくりと吐き、呼吸を整えた。懺悔の心の準備でもしたかの様に。  「妹を殺す為に、不死になりたい。」  ハッキリとした声で言うと、じっと牧師の顔を見つめ、反応を窺った。ゴクリと生唾を飲み込み、自分の言った言葉への返事を待つ。  「成程・・・妹を・・・ねぇ。」  牧師はまた煙草を手に取り、それを吸い出すと、首をコキコキと左右に鳴らした。  「おいっ。ちゃんと理由を言ったぞ。」  予想外に余り楽しそうな反応をしない牧師に、ヘンリーは少し戸惑いながらも言った。今までの牧師の話を聞く限りでは、間違いなく牧師が喜びそうな話だと思っていたからだ。  「おいっ!」  声を大きくして言うヘンリーに、牧師はまた煙草を持ったまま、人差し指を掲げる。  「それは理由になっていないよ?少年。」  理由になっていない、と言う言葉に腹を立てたヘンリーは、怒鳴り気味の声で言った。  「これが僕の理由なんだ!」  怒るヘンリーとは裏腹に、牧師は顔をニヤけさせながら言った。  「違うよ。だってほら、おかしいだろう?妹を殺すのなら、別に不死にならなくてもいいじゃないか。普通に殺せばいい。だろう?」     
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