ヘンリー

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 「そうそう、確か彼女も此処に来た時は喪服姿だったねぇ。どれ位前だったかな?君と同じ様に、険しい顔をしてさ。笑うと可愛らしい顔だろうに。」  嬉しそうに思い出話をする牧師に、ヘンリーは少し呆れた表情で言った。  「数か月前の事なのに、忘れてたのか?」  「え?いや、ほら。沢山の人に会うから、覚えきれないんだよ。ハハハッ。」  そう言うと、頭を掻き毟りながら笑った。ヘンリーは軽く溜息を吐くと、更に呆れた顔になる。そんな彼の事等お構い無しに、牧師はヘラヘラと笑いながら続けた。  「まぁ、それなら分かるねぇー。うん。君が何故不死になりたいのかも、何故不死を殺す方法が知りたいのかも。だって、相手が不死じゃあ~普通の殺し方じゃ無理だしね~。」  その言葉にほっとしたのか、ヘンリーは少し嬉しそうに言った。  「なら、教えてくれるのか?」  今すぐにでも教えてくれと言い出しそうなヘンリーを遮るかの様に、牧師はチッチッと舌を数回鳴らした。そしてまた煙草を鏡台に押し付けると、鏡台の小さな引き出しを開け、その中に吸殻を二本放り込んだ。引き出しの中は、牧師の吸った煙草の吸殻が、ぎっしりと詰まっていた。どうやら灰皿替りの様だ。引き出しを閉めると同時に、ココアパウダーの様な細かい灰が、宙を舞う。     
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