ヘンリー

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 迷いのないその答えに、牧師は嬉しそうに薄笑いを浮かべると、また横に置いてある煙草を手に取り、吸い始めた。牧師の吹かす綿菓子の様な煙草の煙を、ヘンリーは煙たそうに右手で何度も掃った。  「いいよ、教えてあげよう。」  あっさりと言う牧師に、ヘンリーは少し驚いた様子で言った。  「本当か?本当に、知っているのか?」  険しい顔以外の表情を見せたヘンリーに、牧師はまた嬉しそうにする。  「うん・・・君、笑った顔の方がきっと素敵だろうね。」  そんな牧師の言葉に、ヘンリーは照れ臭そうに、耳を赤くしてソッポを向いた。その彼の仕草もまた、嬉しそうに牧師は見つめる。牧師は鏡台に上げていた足を下ろし、今度は少し真剣な顔をした。  「一つ忠告しておくよ。不死について聞かれたのは、君が初めてじゃあない。中には一度不死になり、元に戻る方法を聞きに来た者も居る。でも残念な事に、一度不死になってしまえば、元の体に戻る方法なんて無いんだよ。不死から解放されるには、死ぬしかないんだけど・・・その辺は大丈夫?」  ヘンリーはまた牧師の目を真っ直ぐに見つめると、真剣な眼差しで頷いた。  「覚悟は出来ている。人間らしい死を迎える事は出来ないと。」  ヘンリーの覚悟が伝わって来るかの様で、牧師はニコリと笑い頷いた。  「それともう一つ。」     
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