現実と夢

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「それは、どんな医者なのかと問われると、まだ決めかねているが、そう小さいときから思ってはいたが、心のどこかに俺なんてって、無駄に静止をかける自分がずっと居座っていた」 「だけど、失敗してもいいからさ、チャレンジだけはしてみたいと思っている」   「それって、すごくステキなことだと思います」     千香は素直に尊敬のまなざしで、彼を見つめながら手を握ると、「一緒に頑張りましょう」と橋の上で飛び跳ねた。  本心で応援してくれている彼女に感謝しつつ、「笑わないでくれて、ありがとう」と頭を撫でながら伝えるが、なぜ笑う必要があるのかと、彼女は問う。 「だって、こんな勉強もしてないし、今まで逃げてきたのに今更夢を語るのっておかしくないか?」 「全然、変じゃないです。 むしろこれからが勝負だとおもいますよ! だって、私たちって人生五十年って言われてた戦国時代でも、まだ三分の一ちょっとしか生きてないんですよ?」 「それに、現代なら更に平均寿命が延びているので、まだまだ、これからの人生の時間が長いのに、今の段階で人が頑張ろうとしているのを、馬鹿にして笑ったり、否定するほうが変な気がしますけど」 「そりゃあ、ごもっともな意見だが…」   「大丈夫です。 他の人があなたをバカにしても、私は応援します」  その時、少しだけ雨の香りを含んだ風が二人の間を通り過ぎ、彼女の整った髪を揺らしてくれる。  その光景が、秀にとってはとても輝いて見え、また改めて感謝の言葉を述べた。 「こんな心強い味方がいるなら、俺きっと頑張れるよ」 「そうですよ、それに雪先輩や寧音先輩といった勉強ができる強者つわものもいるんですから、鬼に金棒ですね」   「ちょっと、その使い方間違っているような気がするが、まあいいや」   「そうと決まればさっそく、クレープ食べにいきませんか? 駅前に美味しいお店みつけたんですよ」 「なんの脈絡もないけど、いいね。 今日は糖分ほしいかも」  二人は、千香がおススメするクレープを求めて再度歩き出したが、二人の距離は心なしか、いつもより近くなっているように思えた。  そして、秀はより一層心に決めると、隣を歩く彼女の横顔を眺めながら、明日へと期待を膨らませていく。
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