2 隠し味

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 下着をチノパンごと足首まで脱ぎ下ろされたのとほぼ同時に、小野寺の欲望は糸川の口へと収められた。  声にならない叫びを上げるが、糸川は全く顧みない。 まるでそうするのが、当然だとでも言うかの様に。 「!」  程なくして小野寺が達して放ったモノはお返しとしてか、糸川が余すことなく全てを飲み込んだ。  しかも、小野寺のを口から解放した後もしげしげと眺めていた糸川は、自分の唾液と小野寺の精液とに濡れそぼった下生えを指先で探った。 「痛っっ!」  小野寺は、さっきまでは全くなかった鋭い痛みを下肢に感じる。 立ち上がり、顔を上げた糸川は小野寺に、右手で摘まんでいるモノを示した。  縮れた、白っ茶けた毛だった。 「白髪、見っけ。こんなとこにも生えるんだ」 「・・・そりゃ、生えるだろ。毛があるんだし」  糸川にはそう応えながらも実は、自分でもしげしげと眺めたことはない小野寺には新発見だった。 余りうれしくはなかったが。  しばらくぶりに他人の手で達して、しかも立ったままでだった所為かひどく怠い。 小野寺は全身で壁に寄り掛かり切った。 「大丈夫?小野寺さん?」 「怠りィ・・・早くベッド、行きたい」  顔が上へと向くようにあごを取られる。 いわゆるあごクイというやつだが、今の小野寺には糸川へと突っ込む余裕はない。  しかし、糸川はそんな小野寺の切実な訴えにも全く耳を貸さなかった。 小野寺の体を、今度は背中ではなく胸板を壁へと押し付ける。  むき出しの尾てい骨に、未だ服を着ている糸川の欲望の熱さを感じて、小野寺は体をすくませた。 「アレ?もしかして、小野寺さんって突っ込まれるの初めて?」 「・・・久し振りだから」  あれは結婚する前だから、かれこれもう二十年近く前の話だった。 最後に、ちゃんと付き合っていた男とだった。 「ふーん、まぁいいや。でも、今はおれのことだけ考えてよ。・・・おれとヤッてんだから」 「!?」  考えていることを難なく糸川に見透かされて、小野寺は焦る。 今日は、会社の時みたいにスーツにネクタイ姿ではなかったが、穿いていたスラックスと下着とを脱いだ糸川が今度こそ直に、欲望を押し付けてきた。 「だから、無理だって!」 「分かってる。いきなり突っ込むなんてしないから。おれを信じて」 「・・・・・・」  小野寺が壁についた手に、糸川が自分のを重ねる。 押さえ付けられているの変わりはないが、乱暴だとは小野寺には思えなかった。
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