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志賀が夕食だと書斎へ呼びに来た。俺に淫らな行為を見せ付けたというのに、ピクりと動かない無表情な顔をじっと見てやった。
「旦那様もご一緒ですので、余計な事はお話なさらないで下さい」
「……いい性格してる」
後ろで鋭い視線を感じたが気にせず歩いた。この邸の間取り図が書斎で読んだ本に載っていたのを思い出した。確かめるように辺りを見ていると志賀に腕を掴まれた。
「お入り下さい」
貴久は先にテーブルについていた。貴久の神経質そうな顔に笑みを浮かべた。
「申し訳ございません。父上遅くりました」
「久しく見ない間に背がまた伸びたか?」
「そうですか? 僕には分かりませんが」
貴久は数年前から病を患っていると志賀に聞いた。調子のいい時、自室から出てくるらしい。二人は仕事の話ばかりしていて、貴久は志賀に全てを任せているようだった。
「だるっ……」
「若様、まだ体調が優れないのですか?」
志賀が俺の独り言を遮った。俺は小さくため息を吐くと立ち上がった。
「申し訳ありません。父上、体調が優れないで失礼します」
「そうか、ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます。父上」
志賀は俺を見ないまま、貴久と食事を続けていた。
なんだよ俺は邪魔者だったのかよ!
俺は部屋を出て自室へ向かった。
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