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広い自室で使用人に頼んだ酒飲んでいた。新聞を見ながらこの時代の流行りらしいブランデーをグラスに注いだ。一口飲むと舌がピリピリする。
「……強いな」
いつ現代に戻るんだろう。そう考えると気分が滅入る。昔の青木の事情なんて俺にはどうでもいい。たが、あの小煩い家令を一度黙らせてやろうかと思った。部屋のドアをノックすると志賀が入ってきた。
「若様、おかしな言動はお控え下さいと申したでしょう」
「分かってるよ。悪かったな、言い成りにならなくて」
「……酒?」
「おまえも飲めよ。飲まないとやってられないだろ?」
「そんな気分ではありません」
俺はグラスに酒を注いで志賀の前に置いき、志賀を見ながら酒を飲んだ。注いだ酒を飲もうとしない志賀に笑い掛ける。
「酒が入ってるからって言い訳が出来るのに?」
俺は椅子から立ち上がり机の前に寄りかかった。志賀はグラスを取り一気に煽った。俺がふざけて口笛を吹くと、志賀がグラスを勢いよく机に置いた。そのグラスにまた酒を注いでやる。
「強いじゃん」
「隠さないのですか?」
「おまえが言うな。わざとドア開けてただろう」
「なんのことてしょう」
「父との爛れた関係見せ付けたくせに……」
「・・・」
「父や時久は容易かったのかもしれない。でも俺はそうはいかない。おまえと父の事、ここに垂れ込んだら面白可笑しく書いてくれそうだ」
俺は新聞を指差した。志賀の無表情がピクりと動いた。
「私を脅す気か」
「事によっては」
「何が望みだ」
「そうだな……」
俺は志賀を引き寄せキスをする。志賀が驚いて俺の身体を突き飛ばした。
「……なにする!」
「おまえもそんな顔すんだな。父上と同じように僕にもするか?」
「馬鹿馬鹿しい、なんの有益もない!」
「なるほどね。一つ僕の頼みを聞いてくれない?」
「それはご命令ですか」
「さぁ、どうしようか」
「…承知…致しました」
志賀はそれ以上なにも言わず、足早に部屋を出ていった。
「志賀のやつ、かなり怒ってた」
冷静沈着な志賀が、感情をむき出しにする姿を見てとても愉快だった。俺は一頻り笑い、グラスの酒を煽った。
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