第二話

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広い自室で使用人に頼んだ酒飲んでいた。新聞を見ながらこの時代の流行りらしいブランデーをグラスに注いだ。一口飲むと舌がピリピリする。 「……強いな」 いつ現代に戻るんだろう。そう考えると気分が滅入る。昔の青木の事情なんて俺にはどうでもいい。たが、あの小煩い家令を一度黙らせてやろうかと思った。部屋のドアをノックすると志賀が入ってきた。 「若様、おかしな言動はお控え下さいと申したでしょう」 「分かってるよ。悪かったな、言い成りにならなくて」 「……酒?」 「おまえも飲めよ。飲まないとやってられないだろ?」 「そんな気分ではありません」 俺はグラスに酒を注いで志賀の前に置いき、志賀を見ながら酒を飲んだ。注いだ酒を飲もうとしない志賀に笑い掛ける。 「酒が入ってるからって言い訳が出来るのに?」 俺は椅子から立ち上がり机の前に寄りかかった。志賀はグラスを取り一気に煽った。俺がふざけて口笛を吹くと、志賀がグラスを勢いよく机に置いた。そのグラスにまた酒を注いでやる。 「強いじゃん」 「隠さないのですか?」 「おまえが言うな。わざとドア開けてただろう」 「なんのことてしょう」 「父との爛れた関係見せ付けたくせに……」 「・・・」 「父や時久は容易かったのかもしれない。でも俺はそうはいかない。おまえと父の事、ここに垂れ込んだら面白可笑しく書いてくれそうだ」 俺は新聞を指差した。志賀の無表情がピクりと動いた。 「私を脅す気か」 「事によっては」 「何が望みだ」 「そうだな……」 俺は志賀を引き寄せキスをする。志賀が驚いて俺の身体を突き飛ばした。 「……なにする!」 「おまえもそんな顔すんだな。父上と同じように僕にもするか?」 「馬鹿馬鹿しい、なんの有益もない!」 「なるほどね。一つ僕の頼みを聞いてくれない?」 「それはご命令ですか」 「さぁ、どうしようか」 「…承知…致しました」 志賀はそれ以上なにも言わず、足早に部屋を出ていった。 「志賀のやつ、かなり怒ってた」 冷静沈着な志賀が、感情をむき出しにする姿を見てとても愉快だった。俺は一頻り笑い、グラスの酒を煽った。
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