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「私の顔に何か付いていますか? 毎日、顔を合わせているのですから珍しくないでしょう」
「え? 毎日?」
「若様いい加減にして下さい。昨夜はあんなところで寝ているし、帰りたくないとごねて仕方なしに私使用のこちらへお連れしたのですよ。高校科にご進学なされたのだから、もう少し自重なさってはどうですか」
「ちょっと待て誰が高校生だって? ってかあんた誰? ここの人?」
「本気で仰ってますか?」
頷く俺に男は、ため息を吐くとゆっくり口を開いた。
「時久様は、青木貴久子爵の御嫡男この春から桜蘭高等科にご進学なされたのです。私は時久様の教育係を務めさせて頂いております。家令の志賀直樹でございます」
家令で教育係……?
どこから蹄の音がする。ガラガラと引く車輪の音は昨夜聞いた音と同じだった。俺はベッドから飛び起きた。その時、何かが床に転がったが構わず格子戸に走り開けた。
「時久様!」
俺は出口を探して廊下を走った。土間を見付け、段差に蹌踉けながら格子戸を開けた。そこは何かで見た昔の風景だった。
「時久様」
「今何年だ」
「は…?」
「西暦……」
「1923年ですがそれが何か?」
大正時代?! まさか……
「っっ!」
「時久様!」
また酷い頭痛に襲われ額を押さえた。俺の身体支える腕の中、意識が薄れていく____
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