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わりきり
視線の先で走っている大衆車、バックミラーを覗くと一定の距離感を保ちながら、ヘッドライトを光らせている大型トラック、目に映っては過ぎ去ってゆく反対車線の車。
感動の生まれない夜の景色だ。率直にそう思った。
ハンドルを握りながら帰路を車で進んで行く。
ただ、ただ、それだけ……。
リサオバサンと別れてから僕の心に、明瞭に物足りないという気持ちが存在している。
あの人は、僕をちっとも満たしてはくれなかった。
満たそうとしてくれてはいた。それはわかる。
何故なら生殖器に避妊具をつけないで交接したからだ。
つけなくてもいい。
そう言われたとき、僕は気が触れているのではないかと思った。
だから何故と問う。
あの人は言った。ピルを飲んでいるからだと。ゴムは肌がかぶれてしまう。だから飲んでいると……。
僕は迷った。今日出会った女性と大きなリスクを背負いながら交わる価値があるだろうかと……。
しかし生の腟の感覚を味わえる絶好の機会とも思った。
その二つの思いを天秤にかけたとき、後者の思いが勝ってしまった。
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