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14時10分。コンビニの裏口から深緑のコートを着た女性が入ってくる。
そして僕の座っている所まで躊躇わずにやって来た。
「お待たせ。思ったより混んでて……」
文面で得た情報通りの服装。サヤさんだ。
マスクをしていて、茶色で染めた髪を後ろに束ねている。身長は150㎝半ばで細身だ。
「いえ。全然大丈夫です」
僕は緊張感を持ちながらも、すぐに椅子から立ち上がってサヤさんと裏口から出た。
外は休日の午後だが人通りは少ない。周囲には居酒屋が多く、今は開店準備中というのも理由の1つだろう。
しかし、それはこちらにとって好都合というものだ。
ラブホテルに入る所は赤の他人とはいえ、なるべく見られたくない。
自意識過剰かもしれないが視線を感じる。それはあまり気持ちの良いものではない。
気持ちよくなるためにそこへ入るというのに、僕はいつだって入る寸前の心持ちは悪い。
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