12人が本棚に入れています
本棚に追加
サヤさんは初対面の男と並んで歩いているのに堂々とした振舞いだ。
なるほど、よく慣れている。
僕は一瞬にしてそう思った。年はそこまで変わらないだろうに……。この手の玄人。そんなオーラを漂わせている。
ラブホテルの目の前に来たとき、目の前には三人の中年男性がいた。
僕は動揺して少し顔を歪ませてしまう。しかしサヤさんは、内心は定かではないが表情の変化は見られなかった。
そしてラブホテルの中へと入る。薄暗く、フロントの人は仕切りがあって見えない。
ラブホテルでフロントの人に話しかけるのは二時間無料の駐車券を貰うときくらいだ。
僕達は部屋を決めるときに使用するタッチパネルの前に立った。
「どの部屋がいいですか?」
このホテルはAからEランクまでの部屋がある。Aランクの部屋は休憩二時間八千円だ。その金があれば二時間映画を映画館で四回くらいは見れる。よっぽどの女じゃなければ、まず入室する気が起きない。
「どこでもいいよ」
サヤさんは迷わずに答えた。
僕はEランクのボタンをタッチした。しかし満室のようだ。全く、どいつもこいつも考えることはあまり変わらない。安上がりで発散させたいという浅はかな思考が見え見えだ。
仕方なくDランクのボタンに触れる。一部屋 空いていた。401号室だ。二時間四千円。軽自動車ならレギュラーガソリン満タンで入る。
週一でラブホ通いしてる奴は金に余裕があるんだろうな……。
エレベーターに乗って四階まで行った。そしてドアの上にある401という数字が点滅しているのを発見する。
その扉を開けて僕達は部屋へと入る。扉はカチッと音をさせる。オートロックがかかったんだ。
そしてアナウンスが流れた。
当、ホテルをご利用頂き誠にありがとうございます。ごゆっくりとお楽しみください。と。
ご丁寧にありがとう。言われなくても、やることはしっかり済ませる。済ませなかったら本能に欠陥があるレベルだ。
ベットがある部屋の扉を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!